研究概要
素粒子理論研究室では、場の量子論、超弦理論、一般相対性理論に基づいた理論物理学の研究を行っています。ゲージ・重力対応(AdS/CFT対応)と呼ばれる対応原理を用いて、超弦理論や一般相対性理論を広く物理学一般に応用する研究を行っており、特に現在は、非平衡統計物理学への応用に力を入れています。この方向の主要な研究テーマは下記の通りです。
- ゲージ・重力対応を用いた、非線形電荷輸送の理論的解析
- ゲージ・重力対応を用いた、新奇な非平衡相転移の探索とその解析
- ゲージ・重力対応を用いた、非平衡定常系の基本法則の探求
当研究室の研究内容に対する科学研究費補助金の交付:
- 基盤研究(C)「ゲージ・重力対応を用いた非平衡定常系の基本法則への新アプローチ」
- 新学術領域研究(研究領域提案型) 「ハイパーマテリアル 補空間が創る新物質科」 計画班A04:ハイパーマテリアルの物性とhidden orderの探索
研究会の企画:
- 3rd Meeting of String Theory in Greater Tokyo, Chuo Univ., Oct. 15, 2015.
- International Workshop on Condensed Matter Physics & AdS/CFT, Kavli IMPU, May 25-29, 2015.
超弦理論
超弦理論とは、素粒子物理学の基本理論であるゲージ場の量子論と、重力の基本理論である一般相対性理論を統一的に扱うことのできる、「統一理論」の有力候補です。超弦理論では、全ての粒子は点状の無限小の物体ではなく、ある微小長さの弦から出来ていると考えます。通常の重力の量子論では、計算に取り除くことのできない無限大が現れてしまいますが、このように基本粒子を弦であると考えると、その問題を回避することができます。そればかりか、本来異なる理論だと考えられた、重力理論(一般相対性理論)とゲージ場の量子論を同じ理論の枠組みで記述することが可能になります。
ゲージ・重力対応(AdS/CFT対応)
このような、超弦理論の「統一理論的な」性質を最大限に応用したアイディアの一つがゲージ・重力対応です。この対応原理は、AdS/CFT対応、ゲージ・string対応、ホログラフィック原理、マルダセナ予想、などの呼び名で呼ばれることもあります。この対応を用いると、ゲージ場の量子論における困難な計算や解析を、一般相対性理論における容易な計算に「変換」することが可能となる場合があり、場の量子論の新たな計算手法として注目されています。
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- 移り行く理論物理学とアインシュタインの魔法(Chuo Online 2014年10月23日掲載)
(英語版の記事は
こちら。)
同様の記事が中央大学父母連絡会「草のみどり」278号「教養講座」にも掲載されています。 - 「超弦理論と一般相対性理論がつなぐミクロとマクロ」(「数理科学」2017年7月号)